良い会社なのに、AIが知らない
先日、ある地方の製造業の方から、こんな話を聞きました。
創業50年、業界内では確かな評価があり、大手からの引き合いも絶えない。けれど、ChatGPTに「【その分野】の技術力が高い会社は?」と聞いても、一度も名前が出てこない。それどころか、社名を直接入れても「該当する企業の情報が見つかりません」と返ってくる。
AIから見ると、その会社は存在していないのと同じ状態でした。
こういうケース、珍しくありません。むしろ、良い仕事をしている会社ほど陥りやすい。既存の顧客との関係で事業が成り立っていて、Webで発信する必要がなかったからです。
ただ、AIに聞いて会社を探す人が増えている以上、これは放置していい問題ではなくなってきました。新規の取引先も、採用の応募者も、まずAIに聞きます。そこで名前が出なければ、比較の土俵に上がりません。
この記事では、広告費をかけずに社内でできるAI検索対策を25項目にまとめました。「今日できる10項目」「今月できる10項目」「継続する5項目」の3段階です。全部やる必要はありません。上から順に、できるところから潰していってください。

その前に:よくある5つの原因
チェックリストに入る前に、AIに紹介されない会社に多い原因を挙げておきます。心当たりがあるものから優先すると効率的です。
- 会社概要が最低限しか書かれていない — 住所と電話番号と設立年だけ、というパターン
- 強みが「品質第一」「お客様第一」で終わっている — どの会社も書いていることは、判断材料になりません
- 重要な情報が画像やPDFの中にある — 会社案内PDFに全部書いてあるが、Webページには書かれていない
- 第三者に言及されていない — 自社サイト以外に、その会社について書かれたページが存在しない
- 数年前から更新されていない — 最新情報がないと、AIは「現在も活動しているか」を判断できません
AI検索対策:今日できる10項目
まずは1〜2時間で終わる範囲から。効果が出るまでの時間が短く、コストがゼロのものを並べています。
□ 1. 自社名でAIに聞いて、返ってきた内容を記録する
ChatGPTとGeminiの2つで試してください。ここが出発点です。誤りがあれば、それを直すのが最優先課題になります。
□ 2. 指名せずに聞いて、名前が出るか確認する
「【地域】で【業種】の会社を探しています」という聞き方で。出なければ、この記事の残りが全部あなたの課題です。
□ 3. 会社概要ページに、事業内容を文章で書き足す
箇条書きの単語だけになっていませんか。「何を、誰に、どうやって提供しているか」を、3〜5文の文章で。AIは文章から意味を読み取ります。
□ 4. 設立年・従業員数・所在地・代表者名を、テキストで明記する
画像になっていたら書き直してください。基本情報が揃っていないと、AIは「実在を確認できない企業」として扱いがちです。
□ 5. 「強み」を、具体的な数字か固有名詞に置き換える
「高い技術力」→「【●●】の加工精度で±0.01mmに対応」。「豊富な実績」→「創業以来【●●】社、累計【●●】件」。この置き換えだけで、AIが引用できる情報になります。
□ 6. 対応エリア・対応業種・対応規模を書く
「関東一円」「従業員50〜300名の企業向け」など。AIは条件つきの質問に答えるので、条件が書いてあるほど拾われます。
□ 7. よくある質問(FAQ)を5つ書く
Q&A形式は、AIにとって最も引用しやすい形です。営業でいつも聞かれることを、そのまま5つ書くだけで構いません。
□ 8. 料金・価格帯の目安を載せる
「お問い合わせください」だけだと、比較の対象から外れます。「【●●】万円〜」「規模により【●●】〜【●●】万円」程度でも十分です。
□ 9. Googleビジネスプロフィールを登録・更新する
未登録なら登録を、放置していれば情報の更新を。地域名を含む質問への回答で参照されることがあります。
□ 10. サイトがAIにアクセスされているか確認する
robots.txtで意図せずAIのクローラーをブロックしていないか確認してください。クローラーの扱いはGoogle検索セントラルの公式ドキュメントに説明があります。制作会社に「AI系クローラーを弾いていませんか」と聞くだけでも構いません。ここでブロックしていたら、他の施策が全部無駄になります。
AI検索対策:今月できる10項目
少し手間はかかりますが、効果も大きい領域です。
□ 11. 導入事例・お客様の声を3件書く
「どんな課題があって、何をして、どうなったか」の3点セットで。固有名詞と数字が入っていれば理想的ですが、匿名(【業種】【規模】の企業)でも価値があります。
□ 12. 代表者・技術者のプロフィールページを作る
経歴、専門分野、実績。「誰がやっているのか」は信頼性の判断材料として重視されます。
□ 13. 自社の得意分野について、解説記事を1本書く
売り込みではなく、知見の共有として。「【業界】でよくある【課題】と、その対処法」のような形。これが第三者から参照される起点になります。
□ 14. プレスリリースを1本出す
新サービス、設備投資、受賞、提携、採用強化。何でも構いません。配信サイトに載ることで、自社サイト以外に自社について書かれたページが生まれます。
□ 15. 業界メディア・地域メディアに情報提供する
取材してもらえれば理想ですが、まずは情報提供の窓口にリリースを送るところから。第三者に書かれた記事は、自社サイトより重く扱われます。
□ 16. 業界団体・地域の企業一覧に掲載されているか確認する
商工会議所、業界団体、自治体の企業データベース。中小企業のデジタル化の全体像は、経済産業省のDX関連ページにまとまっています。すでに枠があるのに未記入、というケースがよくあります。
□ 17. 比較サイト・ポータルサイトへの掲載を検討する
自社の業界で、AIによく参照されているサイトを探してください。競合が載っていて自社が載っていない媒体があれば、そこが穴です。
□ 18. 構造化データ(schema.org)を入れる
Organization、LocalBusiness、FAQPageあたりから。制作会社に依頼するなら「構造化データのマークアップをお願いします」で通じます。
□ 19. 採用ページを整備する
仕事内容、社風、働く人の声。採用情報は「その企業が今どう活動しているか」を示す材料として読まれます。求人媒体への掲載も、外部からの言及を増やします。
□ 20. 社名の表記ゆれを統一する
「株式会社●●」「(株)●●」「●●」。サイト内、SNS、外部掲載で表記がバラバラだと、AIが同一企業だと認識しにくくなります。正式表記を決めて、統一してください。
継続する5項目
ここからは、一度やって終わりではないものです。半年、1年という単位で効いてきます。
□ 21. 月1本、一次情報を出す
調査、事例、技術解説、業界の動向解説。何でも構いませんが、「自社にしか書けないこと」であることが条件です。他社の記事の要約は、AIから見て参照する理由がありません。
□ 22. 3か月に1度、AIでの見え方を再確認する
項目1・2をもう一度やって、前回の記録と比べてください。変化があれば、何が効いたのかを振り返る材料になります。
□ 23. 掲載・言及されたら記録する
どのメディアに載ったか、どこから参照されているか。これが自社の「言及の資産」の一覧になります。
□ 24. 古い情報を消す・更新する
終了したサービス、退任した役員、何年も前のお知らせ。古い情報が残っていると、AIがそれを現在の情報として紹介してしまいます。
□ 25. 社内で「発信する担当」を決める
いちばん大事かもしれません。片手間だと必ず止まります。専任である必要はありませんが、「月1本出す」が誰の仕事なのかを決めてください。
全部やらなくていいので、5つだけ
25項目を眺めて「無理だ」と思った方へ。優先順位をつけるなら、この5つです。
- 項目10(クローラーをブロックしていないか)— ここが塞がっていたら他が全部無効
- 項目1・2(現在地の確認)— 何が課題かが分からないと動けません
- 項目5(強みを数字か固有名詞に)— コストゼロで、引用可能性がいちばん上がる
- 項目14(プレスリリースを1本)— 自社サイトの外に情報を出す最初の一歩
- 項目21(月1本の一次情報)— 時間はかかるが、これだけが積み上がる
3段階のまとめ
| 段階 | 項目数 | かかる時間 | 費用 | 効果が出るまで |
|---|---|---|---|---|
| 今日できる | 10項目 | 1〜2時間 | 0円 | 数週間 |
| 今月できる | 10項目 | 10〜20時間 | 0〜数万円 | 1〜3か月 |
| 継続する | 5項目 | 月2〜4時間 | 0円 | 半年〜1年 |
よくある質問
25項目を全部やらないと効果は出ませんか
出ます。とくに項目10のクローラー遮断の確認と、項目5の強みを数字に置き換える作業は、この2つだけでも状況が変わることがあります。全部やることより、原因に合った項目から着手することのほうが大事です。
Webに詳しい人が社内にいません。どこから頼めばいいですか
今日できる10項目は、Webの知識がなくても文章を書き足すだけで済みます。専門知識が要るのは項目10のクローラー確認と項目18の構造化データくらいで、この2つはサイトの制作会社に「AI系クローラーを弾いていないか確認してください」「構造化データのマークアップをお願いします」と伝えれば通じます。
SNSをやっていませんが、不利になりますか
SNS単体の有無より、自社について書かれたページが外部にどれだけあるかが効きます。SNSはその手段のひとつにすぎません。プレスリリース、業界メディアへの情報提供、採用情報の整備でも同じ役割を果たせます。
効果が出ているかは、どう確かめればいいですか
項目1と2を3か月ごとに繰り返し、記録と比べてください。指名せずに聞いたときに名前が挙がる回数が増えていれば、施策が効いています。アクセス解析だけを見ていると、AI経由の変化は捉えられません。
古い情報が残っていると、そんなに影響しますか
します。AIは掲載日を正しく判断できないことがあり、数年前の情報を現在のものとして紹介してしまいます。終了したサービスや退任した役員の記載は、増やす作業より先に消してください。
現在地の確認だけは、先にやってください
繰り返しになりますが、施策から入らないでください。誤情報が流通しているのか、そもそも情報が足りていないのか、情報はあるが選ばれていないのか。原因によって、打つべき手はまったく違います。
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